コラム― Column―

コラム― Column―

コラム― Column―

  1. ホーム
  2. >
  3. コラム

新型コロナが変える働き方 その4
~テレワークの利点と課題~

【2020年6月23日】(リスクマネジメント、人事労務管理、働き方)
 厚労省とLINE(株)による「新型コロナ対策のための全国調査」によると、テレワーク(在宅勤務等)実施割合は、オフィスワーク中心(内勤営業・事務・企画・開発等)の方では、全国平均で27%、緊急事態宣言が最初に発令された7都府県では、最も進んでいる東京都で52%、最も遅れている福岡県では20%で、5%未満の県も多くあったそうで、政府目標の「7割」には届いていない結果となっています。
 なお、テレワークのメリットは、「通勤のストレスがなくなった」ことが一番にあげられます。東京都を含む関東圏の企業では、通勤時間が往復2-3時間になるケースは珍しくありません。時間の節約に加えて、満員電車の通勤疲れもないことは、社員には最大のメリットでしょう。社員の時間も節約できて、疲労も少なければ、労働生産性は当然上がるはずですが、そこで多くの企業はある課題に直面します。
 上司が、テレワークしている部下の管理や評価をどうすればいいのか、という問題です。従来であれば始業時間までに出社して、上司の目が届くところで仕事をするので、勤怠管理や行動把握は簡単にできます。しかし、テレワークでは部下の仕事状況は目に見えません。となると、部下に求めるのは「何の仕事をしたか、できたか」ということにならざるを得ません。
 テレワークによって人事管理も、旧来の「時間管理型」から「ジョブ・成果管理型」に移行する動きが促進されました。“成果型”と聞くと、2000年代に一世風靡した“成果主義”が頭に浮かびますが、社員の不満や不公平感が予想以上に大きかったので、成果主義導入を見直した企業も多くありました。
 その背景には、欧米企業と違って、日本企業では社員個人の仕事の分担や役割責任は明確でなく、部や課といった小単位組織でのチーム型業務が一般的なので、個々人の成果を正しく評価しにくい、という事情があります。仕事に合った人を採用する欧米企業と、人を採用して仕事を振り当てる日本企業との違いです。
とは言え、実はチーム型業務でも個々人の役割責任は定められているはずです。テレワークによって、一人ひとりの職務と役割責任を明確にせざるを得なくなったというのが実態です。
 日本型雇用でも、職務役割・責任を明確にすることは出来ますし、その方が実は効率よく仕事ができることが分かってきました。テレワークのおかげで、日本型の成果型人事制度が生まれつつあると言ってもよいと思います。
 欧米企業のジョブ型雇用では、担当する仕事が何かの事情でなくなった場合には解雇することが出来ます。また会社が担当職務を変更したり、勤務地を変更したりするとそれを嫌がって転職するケースもあります。一方、日本企業では職務変更、部署異動、転勤などは社員にも受け入れられます。日本型の成果主義は、一つの職務だけに縛るのではなく、能力向上に応じて職務を変えられる、人を活かすハイブリッド型の成果主義と言えます。
 社員にとっても、欧米企業のように転職でキャリアアップするのではなく、自社企業の中でキャリアアップができる、ある意味、安定した雇用制度です。
 しかしそこで企業が抱える課題は、これまで職務の役割や責任を明確にしてこなかった、そうする必要がなかったことです。新型コロナによるテレワークで見えてきた課題について、これを機会ととらえ、人事制度や賃金体系、人事評価制度を、旧来の年功序列・時間管理型から、能力序列・成果ジョブ型に移行することが、ポストコロナに生き延びるためには必要です。

ご依頼・お問い合わせはこちら

03-6450-9683
FAX:03-6450-9684
ご依頼・お問い合わせ