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年金改正法に隠された狙い
~年金支給条件の悪化は確実~

【2020年5月28日】(年金、老後、運用、税金)
新型コロナウィルス感染症で世間は騒がしい中で、年金制度改正法案が、ほとんど議論もないままに5月12日に衆院を通過、今国会での成立が確実になりました。しかし、そこに隠されている年金制度改悪の予兆に気付いているでしょうか。
年金改正法の骨子、(1)パート社員など短時間労働者への適用拡大、(2)在職老齢年金の支給停止基準の緩和、(3)年金繰り下げの上限年齢を75歳に引き上げ、の3つです。
改正法の背景には年金財政悪化があります。団塊世代が70歳になり年金支給額はピークを迎えつつある一方で、長引く低金利の下で年金積立金管理運用独立法人(GPIF)の年金資産運用は低迷しているために、公的年金財政はますます悪化しています。
そこで目先の収支改善策として、保険料収入を増加するために(1)加入者適用拡大が実施されます。加入者が増えればそれに応じた年金給付の負債も増えるのですが、まずは目先の保険料収入ということです。現行では従業員数501人以上の事業所が加入対象ですが、2022年からは101人以上、2024年からは51人以上、と従業員数条件が引き下げられます。つまり、これまで厚生年金非加入であった中小企業の加入員数が増えることになります。パート社員にとっては厚生年金制度に加入することで将来の年金が増えるというメリットがありますが、逆に事業主にとっては社会保険料負担が増加して労務費増加につながります。
しかし、新型コロナの影響で中小企業は事業悪化に苦しんでいます。そこにコスト増につながる年金法改正となると、なんとか経費を下げようと考えるのは当然で、そのしわ寄せはパート社員に及びます。パート時間の削減や、社員数の削減、またパートの賃下げにつながる恐れがあります。
(2)在職老齢年金の支給停止基準緩和も、現在60歳から65歳の老齢世代の就労を促して、もっと働きやすくして厚生年金保険料の負担してもらい、収入増を目論むものですが、給付停止条件緩和してこの世代の支給額が増えることは中期的には年金財政の悪化に拍車をかけます。
また、(3)繰り下げ年齢上限の75歳引き上げは、年金額増加をエサに支給開始を遅らせるものですが、老齢者には逆に不信を抱かせます。支給開始年齢が上がると、年金支給期間(平均余命まで)も少なくなります。計算では増えることになっても、老後の健康不安もありますし、支給開始前に亡くなるリスクもあります。そして何よりも、現行の年金支給額水準がいつまで維持できるのか、所得代替率(現役時代の平均給与額に対する年金支給額の比率)も50%に近づきつつあること、またマクロ経済スライドによる実質支給額の抑制も不安材料になります。
それでも、現時点で65歳以上の世代はまだ得をしている世代、いわば年金勝ち組です。(ちなみに筆者はこの世代です)今の中年・若年世代のサラリーマンにとっては、老後生活を公的年金だけに頼ることはまず無理でしょう。
ではどうするのか、70歳まで働き続ける?
いずれにしても現役時代から計画的に老後資金を準備することが絶対必要です。その資金準備方法では、税金負担が減るだけでなく、社会保険料までも減らしながら、かつ安全確実に積み立てができる最も有利な方法があります。くわしくは次回に。

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