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2019年3月12日
2019年度の公的年金支給額が決定、
年金額増加を抑える「マクロ経済スライド」とは?

(保険、年金、ライフリスク) 
 公的年金の支給額は、物価や賃金の動きにあわせて毎年4月に改定されます。今年4月からの年金額が厚生労働省から発表されました。直近の物価・賃金は上昇しているという統計が出たので、本来ならば年金支給額は0.6%上がるはずでしたが、公的年金には“マクロ経済スライド”という年金給付額を抑えるための仕組みがあり、年金支給額の増加は物価上昇を下回る0.1%に抑えられました。実際には2019年度の年金支給額は次のように変わりました。
・国民年金(基礎年金)は満額で、前年の年額77万9,300円(月額6万4,941円)から年額78万100円(月額6万5,008円)に年額804円(月額67円)に0.1%アップ。本来は前年より0.6%アップ(年額4,824円、月額402円)上げるべきだったのに、“マクロ経済スライド”によって0.1%に抑えられました。
・厚生年金;標準的な年金額(夫婦ともに65歳以上で、会社員の夫は平均年収514万円で40年間勤務、妻は40年間専業主婦の場合)では、年額265万8,066円(月額22万1,504円)で前年より年額2,724円(月額227円)アップになりました。これも、0.6%アップするべきなのに0.1%に抑えられました。
 マクロ経済スライドがある限りは、物価や賃金が上がっても年金額はそれほど上がらないので、年金生活者の生活は少しずつ苦しくなります。でも、こうしておかないと、今の公的年金制度を、若い世代が将来年金をもらう頃までに維持することができないということです。逆に物価が下がっても年金額は前年からは下がらないようになっています。つまりデフレの時には年金生活者は生活が少し楽になっていた、ということです。しかし、マクロ経済スライドにはさらに仕掛けがあって、物価が下がったのに年金額を下げなかった分は、物価が上がった時に取り戻すことになっています。下げるべき分を繰越し(キャリーオーバー)して物価が上がった時に取り戻すのです。結局、年金生活者は、物価が上がっても下がっても、少しずつ生活は苦しくなるようになっています。でも、そうしないと公的年金制度はもう維持できない、ということです。だからその分、自助努力で老後に備える重要性がますます高まります。
 しかし、物価や賃金の統計資料がそもそも信頼できない、となると公的年金制度の信頼性がさらに下がることになりますね。しっかりしてくださいよ、厚労省さん!!

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